いちいち本レビュー

たんたんと本の感想を書いていくブログ。書評よりもっと軽いメモみたいなもの。

「十字架」/重松清

十字架 (100周年書き下ろし)十字架 (100周年書き下ろし)

講談社 2009-12-15
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忘れるという事は悪い事なのか…。

いじめを苦に自殺した少年の遺書には四人の名前が書かれていた。

ありがとう、ゆるさない、ごめんなさい。

このお話の深いところは、いじめを苦に自殺したフジジュンだけを同情していられないところなんじゃないかと思う。

何が悪で何が善なのか、それがはっきりしているなら、読み手は考えなくていいから。

これにはそれがないから、読み終わっても答えなどない。

自分の中で何かに気づき納得しなければ、いくら探しても答えなど見つからない。

いじめられていたフジジュン、傍観者だった主人公、残酷な言葉を浴びせかける記者、フジジュンの父、母、どの人の気持ちも分かる。

言い分も分かる。

一気に何人もの重荷を背負って、彼らたちと同じように十字架を背負って、読み終えた。

きっと誰もが誰かに共感する。

いじめ自殺のニュースが流れても、一瞬の同情や憤りが浮かんではすぐに忘れ去ってしまう。

自殺したら、死んだら終わりではないんだという事、それに気付かされただけでも、読んで良かった。

ちょうど読んでいる途中に、この作品が「吉川英治文学賞」に選ばれたと知りました。

★★★★☆

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